「もう、立ち仕事は限界だ」 「夏は涼しくて、冬は暖かいオフィスで、座って仕事がしたい」
飲食店の厨房で、汗だくになりながらフライパンを振っている時。 ふと、そんな叶わぬ夢を見てしまうことはありませんか?
私もそうでした。 腰は慢性的に痛いし、足の裏は感覚がない。 ガラス張りのオフィスビルを見るたびに、「あの中でパソコンを叩いている人たちは、自分とは違う世界の住人なんだ」と卑下していました。
よく、転職サイトやネットの掲示板にはこう書かれています。 「店長から事務職への転職はやめておけ」 「給料が激減するぞ」 「30代男性が事務なんて無理だ」
これは、本当なのでしょうか? それとも、ライバルを減らすための嘘なのでしょうか?
結論から言います。 半分は本当で、半分は嘘です。 戦略なしに「ただの事務」になると、生活水準が崩壊して後悔します。 しかし、店長経験を活かせる「攻めの事務(バックオフィス)」を選べば、年収を維持したまま、土日休みの生活が手に入ります。
今回は、実際に店舗を脱出して「デスクワーク」の世界へ飛び込んだ元店長3人(私の元同僚や知人)に話を聞きました。 彼らが語る「本音」と「後悔」、そして「給与明細のリアル」を包み隠さず公開します。
序章:なぜ、店長はみんな「事務」になりたがるのか
事例に入る前に、少しだけ私の話をさせてください。 現在、私はIT企業の管理部門で働いており、年収は約500万円です。いわゆるデスクワークです。
店長時代、私が一番辛かったのは「肉体的な限界」でした。 若いうちは良くても、40歳、50歳になって現場に立ち続けられるイメージが全く湧かなかった。 だから、「座ってできる仕事」=「事務職」という短絡的な思考で転職活動を始めました。
でも、エージェントに言われた一言で目が覚めました。 「〇〇さん、ただの一般事務だと、手取り18万になりますよ? 奥さん、許してくれますか?」
ゾッとしました。 「楽さ」と引き換えに「貧困」を選ぶのか。それとも「激務」のまま稼ぐのか。 その二択しかないと思っていた私が見つけた「第三の道」。 それが、今回紹介する3人の中に隠されています。
事例1:【一般総務へ転職】 Aさん(32歳男性・元居酒屋店長)の悲劇
まずは、失敗例とも言えるAさんの話です。 彼は「とにかく今の店から逃げたい」一心で、未経験歓迎の「一般総務」に転職しました。
- 転職前: 年収420万円(居酒屋店長・激務)
- 転職後: 年収300万円(中小企業の総務・定時帰り)
Aさんの本音
「正直、生活はカツカツです。手取りが20万を切る月もあって、独身だからなんとかなっていますが、結婚は諦めました。 仕事は楽です。備品の管理とか、電話対応とか。でも、誰でもできる仕事だから、給料が上がる見込みがないんです。 あと、一日中誰とも喋らずにパソコンに向かうのが、こんなに苦痛だとは思いませんでした。 厨房のあの『戦場のような熱気』が、少し恋しくなる時があります」
元店長(私)の分析
これが「店長は事務はやめておけ」と言われる所以です。 「一般事務」は人気職種なので、買い手市場です。特別なスキルのない30代男性が飛び込むと、給与ダウンは避けられません。 Aさんは「逃げ」で選んでしまったため、キャリアの袋小路に入ってしまいました。
事例2:【経理へ転職】 Bさん(29歳女性・元アパレル店長)の苦悩
次は、資格を取って「経理」になったBさんです。 彼女は真面目な性格で、店長時代に簿記2級を取得し、堅実なキャリアチェンジを果たしました。
- 転職前: 年収350万円(アパレル店長・休み不定期)
- 転職後: 年収350万円(メーカー経理・土日休み)
Bさんの本音
「年収は維持できましたし、土日休みも手に入りました。待遇には満足しています。 でも、人間関係のギャップに苦しんでいます。 店舗時代は、スタッフみんなで『今月予算いくぞ!』って盛り上がったり、仕事終わりに飲みに行ったりしてたじゃないですか。 今の職場、シーンとしてるんです。キーボードの音しか聞こえない。 隣の席の人が何考えてるか分からない。 『店長時代のコミュニケーション能力』が、ここでは『うるさい』『お喋り』って思われそうで、自分を殺して働いています」
元店長(私)の分析
「静かな環境」は、店長にとって実はストレスになることがあります。 私たちは「人と話すこと」でエネルギーを得ていた部分があるからです。 Bさんは条件面では成功しましたが、自分の「適性(性格)」とのミスマッチに悩んでいます。
事例3:【人事(採用担当)へ転職】 Cさん(34歳男性・元カフェ店長)の大逆転
最後は、私が一番おすすめしたい「勝ちパターン」のCさんです。 彼は店長時代の「採用・教育経験」を武器に、成長企業の「人事」に転職しました。
- 転職前: 年収450万円(カフェ店長・サービス残業あり)
- 転職後: 年収520万円(IT企業の人事採用担当・土日休み)
Cさんの本音
「最高です。年収が上がって、休みも増えました。 やってる仕事は、実は店長時代と変わらないんですよ。面接をして、いい人を採用して、研修して。 違うのは、『アルバイトを採用するか、正社員を採用するか』だけ。 店長時代、人手不足の中で必死に求人原稿を考えたり、面接で口説いたりしてた経験が、そのまま活きてます。 会社からは『現場の気持ちがわかる人事』として重宝されていますし、何より『人と関わる仕事』だから楽しいです」
元店長(私)の分析
これです。これが正解です。 Cさんは「事務」ではなく「専門職(人事)」として自分を売り込みました。 でも、使っているスキルは店長時代のものそのままです。 「店長経験」を「人事スキル」と翻訳しただけで、市場価値が跳ね上がったのです。
結論:ただの「事務」になるな。「専門職」になれ
3人の事例から分かること。 それは、「何の事務になるか」で天国と地獄が分かれるということです。
× 一般事務・総務 (誰でもできる=年収が下がる)
△ 経理 (資格が必要=静かな環境が合うならアリ)
◎ 人事・採用・営業事務 (店長スキルが活きる=年収維持〜アップが可能)
私たちが目指すべきは、Cさんのような「現場経験を活かせるバックオフィス」です。 店長は、実は「人事(採用・教育)」であり、「営業(売上管理)」であり、「総務(店舗設備管理)」でもあります。 この経験を、正しく評価してくれる企業に行けば、年収500万オーバーのデスクワークは夢物語ではありません。
では、どうすればCさんのようになれるのか? 私が実践した「3つのステップ」を共有します。
ステップ1:自分の店長経験を「値段」に変える
まずやるべきは、自分の中に染み付いた「店長=何でも屋」という意識を捨てることです。 あなたは「何でも屋」ではなく、「経営資源(ヒト・モノ・カネ)の管理者」です。
でも、いきなりそう言われても自信がないですよね。 だから、ツールを使って客観的な数字を見てください。
私が使ったのは、転職アプリのミイダス
です。 スマホで職務経歴に関する質問に答えるだけで、「あなたの市場価値は〇〇万円です」と出してくれます。
私の時は「580万円」と出ました。 「え、俺のスキルって、他社に行けばこんなに高いの?」 この気づきが全ての始まりでした。 ただの事務員として安売りする必要はない。この値段で売れる「専門職」を探そう。そう決意できたのです。
[ミイダス
で自分の「適正年収」を見てみる]
ステップ2:スキルを「翻訳」してもらう
次にやるべきは、職務経歴書の書き換えです。 そのまま「レジ打ちが得意です」と書いても、事務職には受かりません。
- 「アルバイトのシフト管理」 → 「人員配置の最適化による人件費削減」
- 「クレーム対応」 → 「顧客満足度の向上とリスク管理」
- 「新人研修」 → 「人材育成カリキュラムの策定」
こうやって「翻訳」することで、人事担当者に「お、この人はオフィスでも活躍できそうだ」と思わせることができます。 でも、自分一人でこの翻訳をするのは難しいです。
私は、doda
のエージェントに丸投げしました。 「店長の仕事を、人事や総務で活かせるように書き直したいです」と伝えたら、プロが完璧に添削してくれました。 Cさんが成功したのも、dodaの担当者と二人三脚で「採用のプロ」というキャラ設定を作ったからです。
[doda
で職務経歴書を「翻訳」してもらう]
ステップ3:大量の求人から「穴場」を探す
自分のキャラ設定ができたら、あとは「数」の勝負です。 人気の人事や総務の求人は、倍率が高いです。
だからこそ、業界最大手のリクルートエージェント
を使います。 ここは「非公開求人」の数が桁違いです。
「未経験歓迎の人事」「営業サポート(営業事務)」 こうした求人は、表に出ると応募が殺到するので、リクルートの裏側に隠されています。 私はここで、今の会社の「管理部門マネージャー候補」という求人に出会いました。 店長経験があったからこそ、「現場の気持ちがわかる管理職」として採用されたのです。
[リクルートエージェント
で「非公開求人」を探す]
最後に:座って仕事をする毎日は、退屈だけど幸せだ
今、私は空調の効いたオフィスで、座って仕事をしています。 足は痛くないし、腰も軽くなりました。 土日は家族と公園に行き、夜は家でゆっくりテレビを見ています。
Bさんのように、たまに「刺激が足りないな」と思うことはあります。 厨房のあの、オーダーが止まらない時のヒリヒリするような感覚。仲間とのハイタッチ。 あれはあれで、青春だったなと思います。
でも、35歳を過ぎた今、私が欲しいのは「刺激」ではなく「安心」でした。 来月のシフトに怯えなくていい。 自分の身体が壊れる心配をしなくていい。
もしあなたが、かつての私のように「身体の限界」を感じているなら、どうか「事務職」という選択肢を捨てないでください。 ただし、「逃げの事務」ではなく、「攻めのバックオフィス」を目指してください。
店長として戦ってきたあなたには、その価値があります。 まずは、自分の値段を知るところから始めてみませんか?
1. まずは自信を取り戻す。自分の「適正年収」を知る
【ミイダス
】 店長は自己評価が低すぎます。「どうせ年収300万の事務しかない」と妥協する前に、スマホで診断を受けてください。「自分は500万狙える」とデータで知るだけで、転職の軸が「逃げ」から「攻め」に変わります。
2. 店長スキルを「人事・総務スペック」に書き換える
【doda
】 自分で経歴書を書くと「レジ打ち・品出し」になりがちです。これでは受かりません。dodaの添削で「マネジメント・労務管理」へと翻訳してもらってください。これが年収を下げないための最重要ポイントです。
3. 倍率の高い「事務・管理系」の非公開求人を狙う
【
リクルートエージェント 】 人気のバックオフィス職(特に未経験可)は、ネットに出る前に埋まります。リクルートが隠し持っている「非公開求人」にアクセスしないと、そもそも勝負の土俵に立てません。


コメント