「月給30万円(固定残業代含む)」
転職活動中、特に店長・副店長のような管理職求人で、この一文を頻繁に目にしませんか?
魅力的な給与額に見えても、その裏には「どれだけ働いても給料は同じ」「基本給が不当に低い」といった“固定残業代の落とし穴”が隠れている可能性があります。
毎日長時間働き、心身をすり減らしてきた経験があるからこそ、次の職場では正当に評価され、安心して働きたい。そう考えるのは当然のことです。
固定残業代は制度自体が悪いわけではなく、超過分の未払いや内訳が不明な求人が違法であること。
求人票の5つのポイントで、応募前に危険な求人を即チェックできること。
そのまま使える質問スクリプトで、面談で企業の本音を引き出せること。
この記事では、転職エージェントを使いながら、求人票のどこを見て、面談で何を聞けば「固定残業代のワナ」を見抜けるのか、具体的なチェックリストと質問スクリプトを徹底解説します。
あなたの貴重な時間を安売りしないために。この知識は、あなたの転職活動を成功に導く「お守り」になります。
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なら、担当者が企業の内部事情(平均残業時間や制度の運用実態)を把握しているケースも。非公開求人の照会と合わせ、聞きにくいことを代わりに確認してもらい、不確実性をゼロにしましょう。
そもそも「固定残業代」とは何か?
まず、固定残業代(固定残業手当とも呼ばれます)制度そのものが悪いわけではありません。正しく運用されていれば、企業と労働者の双方にメリットがある制度です。
固定残業代制度とは
実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度のこと。
大原則として、固定残業時間を超えて働いた分については、1分単位で追加の残業代を支払う義務が企業にあります(労働基準法第37条 ※脚注3)。このルールは必ず覚えておいてください。
【要注意】店長・副店長が陥りがちな固定残業代の“4つの落とし穴”
では、具体的にどのような危険が潜んでいるのでしょうか。特に多忙な店舗管理職が陥りやすい4つのパターンです。
落とし穴1:常態化した長時間労働
「固定40時間分込み」と書いてあっても、実態は毎月70〜90時間残業が当たり前。しかも超えた分の申請が通らない。この状態が続くと、手取りは増えないのに体力だけ削られます。まず、求人票にある「固定残業◯時間」と、面談で聞ける「実際の平均残業時間」を並べて考えます。固定40に対して実績が60なら、毎月20時間は追加支払いが必要です。ここが支払われていないならアウトです。面談では「このポジションの平均残業は何時間くらいですか。繁忙期は最大どのくらいですか。超えた分の申請と承認はどう進みますか」と順に確認します。回答が曖昧、もしくは「皆さんで頑張って…」という根性論が出たら危険信号です。
落とし穴2:不当に低い基本給
「月給30万円(固定残業代含む)」の“見た目”は良くても、内訳が「基本給20万円+固定残業10万円/60時間分」だと、ボーナスや退職金は基本給を基準に計算されるため、生涯年収で不利になります。面談では「基本給はいくらか」「固定残業は何時間・いくらか」「賞与の算定基礎は基本給か」をセットで確認します。例えば賞与が年2回、各1.5か月分なら、基本給20万円と24万円では1回あたりの差が6万円、年で12万円、生涯では大きな差になります。目先の“総額”より、“基本給の厚み”が将来の安心に直結します。
落とし穴3:申請できない空気
求人票には「超過分は別途支給」とあっても、現場では「申請すると評価が下がる」「上長が承認しない」「タイムカードが実態に合わない」という“見えない壁”が残業代を消します。ここはルールより“運用”が大事です。面談では「超過分の申請はどのツールで、誰の承認が必要か」「PCログやシフトと勤怠は突合されるか」「実際に超過分が支払われた事例があるか」を聞きます。答えが「わかりません」「前例は聞いたことがない」なら黄信号です。さらに面接では「忙しい日はどんな体制で応援が入りますか」「締め作業で定時を超えた場合の扱いはどうですか」と、具体的な1日の流れで尋ねると“空気”が見えます。
落とし穴4:最低賃金割れ
固定残業を多く積んでいる求人は、基本給を時給換算すると地域の最低賃金を下回るケースがあります。計算は簡単で、「基本給÷所定労働時間=時給」です。例えば基本給18万円、所定170時間なら時給は約1,059円です。東京都の最低賃金(例)より低ければ、そもそも論外です。面談では「所定の月間労働時間は何時間か」「シフト短縮や公休が減る月の取り扱いはどうか」を確認します。数字が出てこない、もしくは回答が月ごとにブレる企業は注意です。最終的に「基本給」「所定時間」「地域の最低賃金」の三つを手元で計算して、下回る可能性がないかを必ずチェックしてください。
なお、36協定の特別条項により一時的に上限を超えることは可能ですが、これはあくまで例外運用であり、回数・手続き・理由が厳しく限定されます。恒常的な長時間労働は不適切です。
「管理監督者」や「裁量労働制」との違いに注意
「店長は管理監督者だから残業代は出ない」と言われた経験はありませんか?
裁量労働制やフレックスタイム制、管理監督者の扱いは固定残業代と別の制度です。制度が異なっても、深夜労働の割増賃金の支払義務は残りますし、固定残業代の内訳不記載や超過未払が許容されるわけではありません。制度名と運用実態は必ず切り分けて確認してください。
応募前に見抜け!募集要項の“ここを見て”チェックリスト
これらの落とし穴を避けるため、まずは応募書類を出す前に、募集要項を隅々までチェックしましょう。
求人票の判定ミニ表
判定 | 条件 |
---|---|
✅ OK | 基本給・固定残業の時間と金額・超過分支給が全て明記されている。 |
⚠️ 要注意 | 時間が45時間を超える、割増率がギリギリなど、実態の確認が必要。 |
❌ 論外 | 内訳が不明、または計算上不適切な求人。応募は見送るべき。 |
職業安定法施行規則や厚生労働省の指針により、企業は固定残業代について「①手当額」「②算定根拠となる時間数」「③超過分は別途支給する旨」を明示する義務があります(※脚注1, 4)。
【募集要項チェックリスト】
[ ] 1. 「基本給」と「固定残業代」の金額が明確に分けて書かれているか?
[ ] 2. 固定残業代が「何時間分」なのか明記されているか?
[ ] 3. 「超過分は別途全額支給」の一文があるか?
[ ] 4. 固定残業の「時間」は妥当か?(目安は45時間以下)
[ ] 5. 固定残業代は「割増率(1.25倍以上)」を満たしているか?
【具体例1で計算】
求人票:月給30万円(基本給24万円+固定残業代6万円/40時間分)
所定労働時間:170時間と仮定
時給換算: 240,000円 ÷ 170時間 = 約1,411円
法的基準額: 約1,411円 × 1.25倍 × 40時間 = 70,550円
判定: 基準額(70,550円) > 提示額(60,000円) → 不適切
【具体例2で計算】
求人票:月給28万円(基本給22万円+固定残業代6万円/30時間)
所定労働時間:160時間と仮定
時給換算: 220,000円 ÷ 160時間 = 1,375円
法的基準額: 1,375円 × 1.25倍 × 30時間 = 51,563円
判定: 基準額(51,563円) < 提示額(60,000円) → 一応適合。ただし固定30時間が恒常的なのか、実態の確認は必要。
なお、月60時間を超える時間外労働に対する割増率は50%以上が法定です。(※脚注3)
また、「基本給 ÷ 所定労働時間」で算出した時給が、あなたが働く地域の最低賃金を下回る場合は、その時点で違法の可能性が高いです。
例(東京都の最低賃金1,113円の場合): 基本給18万円・所定170時間なら時給約1,059円となり、最低賃金割れの恐れがあります。
求人票の内訳が不明なら、ここで担当に確認依頼を
少しでも「あれ?」と思ったら、応募前にリクルートエージェント
の担当者に相談を。あなたの代わりに企業へ確認し、クリアな状態で選考に進めるようサポートしてくれます。
面談で本音を引き出す!固定残業に関する質問スクリプト
固定残業の実態は「制度」ではなく「運用」で見抜けます。求人票の文言だけでは判断できないため、面談では順序立てて事実を集め、曖昧な返答にはていねいに掘り下げることが重要です。ここでは、転職エージェントとの面談と、企業面接それぞれで使える“そのまま言える”質問例と、答えが曖昧だったときの切り返し、面談後のフォロー依頼文までを通しでご用意します。
1.面談前の準備(30秒で確認)
面談の冒頭で迷わないように、求人票に書かれている「基本給」「固定残業の金額」「固定残業の時間数」「超過分の扱い」の四点をメモしておきます。あわせて、月の所定労働時間(不明なら170時間で仮置き)と、働く予定エリアの最低賃金も手元に控えておくと、その場で計算と照合ができます。
2.転職エージェント面談で使う質問スクリプト
エージェントは企業の内情を持っています。角を立てない枕詞を添え、数字と手順を確認する順で聞いていきます。
「恐れ入ります、誤解がないように一点ずつ確認させてください。」
「入社後のミスマッチを避けたいので、実態ベースで伺えますでしょうか。」
「こちらのポジションの月間の平均残業時間は、直近だとどのくらいでしょうか。繁忙期の山はいつで、最大は何時間程度になりますか。」
「固定残業時間を超えた分について、実際に支給された事例をご存じでしたら具体的に教えてください。直近何名くらいが超過分を受け取っていますか。」
「残業の申請はどのツールで、だれの承認を経て、いつ支払われる運用でしょうか。PCログや打刻と突合する運用はありますか。」
「求人票では固定残業が〇〇時間・〇〇円とありますが、基礎となる基本給はいくらで、賞与や退職金は基本給ベースでしょうか。」
「所定労働時間は月何時間で計算されていますか。基本給を所定時間で割った時給が、エリアの最低賃金を下回らないかも確認したいです。」
「繁忙期の特別条項の運用実績はありますか。年に何回まで、最大どの程度まで残業時間が伸びますか。」
「ありがとうございます。私の理解が合っているか確認させてください。平均は〇〇時間、繁忙期最大は〇〇時間、超過分は申請すれば支給されるご認識でよろしいでしょうか。もし社内資料や実績のわかる範囲で、エビデンスが取れましたら共有をお願いできますか。」
3.企業面接で使う逆質問スクリプト
面接では“お金の話”を直接切り出すより、仕事の進め方と運用の仕組みから入ると自然です。最後に支払いの実績に触れると角が立ちません。
「早く戦力になりたいので、業務の繁閑を把握したいです。チームの月平均の時間外はどのくらいでしょうか。繁忙期はいつで、最大はどの程度になりますか。」
「固定残業〇〇時間分の記載を拝見しました。超過分が出たときは、どのツールで申請し、だれが承認し、どの締めで支払われる運用でしょうか。勤怠の打刻とPCログの突合など、運用上の仕組みがあれば教えてください。」
「前職ではオペレーション改善で残業を〇〇%削減しました。御社では業務効率化や応援体制の標準ルールなど、どのような取り組みがありますか。」
「給与の内訳について、基本給はいくらで、固定残業の時間数・金額は求人票と一致していますでしょうか。賞与や退職金の算定基礎は基本給と理解してよろしいでしょうか。」
「ありがとうございます。入社後の認識ずれを避けたいので、平均値や運用フローは数字と手順の単位で確認させてください。もし現時点で不確かな場合は、後日、採用ご担当さまからのご回答をいただけますでしょうか。」
4.面談後に送るフォロー依頼テンプレート(エージェント宛)
その日のうちに短い依頼文を送り、エビデンスを取っておきます。以下をそのまま使えます。
件名:固定残業の運用確認のお願い(企業名/ポジション名)
本文:
「本日は面談ありがとうございました。入社後の認識ずれを避けるため、下記三点について企業さまへの確認をお願いできますでしょうか。
① 当該ポジションの直近12か月の平均残業時間と、繁忙期最大値
② 超過分残業代の申請フロー(使用ツール、承認者、支払タイミング)と支払い実績の有無
③ 給与内訳(基本給、固定残業の時間数・金額)および賞与の算定基礎
確認が取れましたら、わかる範囲のエビデンスとともに共有をお願いいたします。」
※脚注1:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」(PDF)において、①固定残業代を除いた基本給の額、②固定残業代の額と算定根拠となる時間数、③固定残業時間を超える時間外労働については追加で割増賃金を支払う旨、の3点を明示することが求められています。
※脚注2:大阪労働局・ハローワーク「求人内容を明確に記載しましょう」(PDF)においても、同趣旨の明示義務が記載されています。
※脚注3:労働基準法第37条では時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金の支払いが定められています。2023年4月1日からは、中小企業においても月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられました。
※脚注4:青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針(いわゆる「若者雇用促進法に基づく指針」)(PDF)の第2の2(4)により、固定残業代に関する事項を明示することが事業主に求められています。
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