閉店作業を終えて家に帰り、3時間寝てまた出勤する。 休みの日でも、アルバイトから「熱が出た」と連絡があれば、自分が代わりに出るしかない。
そんな生活を続けていると、「普通の生活」が何なのか分からなくなってきます。 「今の店より給料が良くて、ちゃんと休みが取れるならどこでもいい」 そう思って転職サイトを眺めても、どれも良いことばかり書いてあって、何が本当か分からない。
かつて私もそうでした。 これは決して特別な話ではありません。責任感の強い店長なら、誰もが一度は味わう絶望感だと思います。
しかし、焦りは判断を狂わせます。 私は一度目の転職で焦って失敗し、また似たような激務の店長職に就いてしまい、ひどく後悔しました。
結論を言います。 ブラック企業を避けたいなら、求人票に書いてある「アットホーム」や「高収入」という言葉を信じてはいけません。 その裏にある「実際の離職率」や「現場のリアルな社風」を知る必要があります。
この記事では、私が二度目の転職で失敗しないために使った、3つの転職サービスを紹介します。 感情論ではなく、「どうやって企業の嘘を見抜くか」という現実的な方法だけを書きます。
なぜ、店長は転職でまた「ブラック」を引いてしまうのか
理由は単純です。私たちに「企業を見る目」がないからです。 求人広告は、あくまで「広告」です。企業はお金を払って、良いことしか書きません。
- 「未経験歓迎」 → 人が定着しないから、誰でもいいから欲しい
- 「幹部候補募集」 → 名ばかり管理職で、残業代を出さずに使い潰す枠
- 「若手が活躍中」 → 激務すぎて、ベテランが全員辞めた
現場にいれば「あるある」だと分かりますが、いざ自分が仕事を探す側になると、焦りもあってこの嘘に気づけません。 「月給30万」という数字だけに釣られて、またサービス残業だらけの会社に入ってしまう。これが典型的な失敗パターンです。
これを防ぐには、自分一人で探さず、企業の「裏事情」を知っているエージェント（担当者）に聞くのが一番確実です。 私が実際に使って役に立ったのは、以下の3つです。
1. 【リクルートエージェント】「すぐ辞める会社」をデータで見抜く
まず登録したのは、業界最大手の
リクルートエージェント
です。 ここを使った理由は、求人数が多いからではありません。「過去のデータ」を持っているからです。
実際にあった「危なかった話」
ある時、求人サイトで「月給35万円・完全週休2日」という飲食店の本部職の求人を見つけました。 今の店より条件が良いので飛びつこうとしたのですが、念のためリクルートの担当者にその企業について聞いてみました。
すると、担当者はパソコンでデータを検索し、こう教えてくれました。 「〇〇さん、ここは条件は良いですが、過去に紹介した方の定着率があまり良くないですね。入社しても1年以内に退職される方が多いようです」
理由を聞くと、トップダウンが激しく、現場の意見が通らない社風とのことでした。 求人票には「風通しの良い職場」と書いてあったのに、です。
ブラック回避のための使い方
リクルートは長年やっているだけあって、膨大な「退職データ」を持っています。 面談では、気になる企業があったら必ずこう聞いてください。
「この会社は、中途入社した人の定着率はどうですか？」 「平均勤続年数はどれくらいですか？」
もし担当者が言葉を濁したり、「入れ替わりは激しいですね」と言ったりしたら、そこは避けるべきです。 この「裏の数字」を確認できるだけで、地雷を踏む確率はグッと下がります。
[リクルートエージェント
で「定着率」を確認する]
2. 【doda（デューダ）】「使い潰されない」ための書類を作る
次に使ったのが、doda
です。 ここは、私の「店長としての自己評価」を修正するために使いました。
店長は「何でも屋」だと思われている
店長の仕事は、接客、調理、クレーム対応、シフト管理、発注と多岐にわたります。 でも、それをそのまま職務経歴書に書くと、「ただの何でも屋」に見られてしまいます。結果、また「何でもやらされる激務の会社」からしか声がかかりません。
doda
の担当者は、私の経歴書を見てこうアドバイスしてくれました。 「レジ打ちや品出しのことは書かなくていいです。それよりも『人件費をどうコントロールしたか』『スタッフの教育でどう売上を上げたか』を書きましょう。それは立派なマネジメントスキルです」
なぜ「書類」がブラック回避になるのか
実は、ブラック企業ほど「自分に自信がない人」を好んで採用します。自己評価が低い人は、無理な要求をしても「自分が悪いんだ」と思い込み、文句を言わずに働くからです。
逆に、職務経歴書で自分の価値を論理的に説明できる人には、ブラック企業は寄ってきません。「この人は権利を主張しそうだ」「使い潰すのは難しそうだ」と判断するからです。 つまり、doda
で書類を整えることは、ブラック企業に対する「魔除け」になるのです。
[doda
で「職務経歴書」を添削してもらう]
3. 【リクナビNEXT】「まともなオファー」だけを見る
最後は、転職サイトのリクナビNEXT
です。 これはエージェントではありませんが、「スカウト機能」を使うことで、ブラック企業をフィルタリングできます。
「数撃ちゃ当たる」のスカウトは無視する
登録すると、毎日たくさんの「スカウトメール」が届きます。 でも、そのほとんどは「条件に合う人全員」に送っている自動送信メールです。中には、大量採用・大量離職を繰り返しているブラック企業も混ざっています。
私が注目したのは、個別のメッセージが添えられた「プライベートオファー」だけです。 そこには、「あなたの職務経歴書の〇〇という実績に興味を持ちました」と、具体的な理由が書かれていました。
ブラック回避のための使い方
なぜ「個別オファー」が安全なのか。それは、企業側の「手間」が違うからです。 個別オファーを送るには、人事が一人ひとりの職務経歴書を読み込み、文章を作る必要があります。
人を使い捨てにするブラック企業は、そんな面倒なことはしません。コピペの一斉送信で釣れた人を採用するだけです。 つまり、手間暇かけたオファーが来るということは、それだけで「人を大切に選ぼうとしている会社」である証明になります。
リクナビNEXT
に登録したら、この「本気のオファー」だけを待ってください。それが、自分の市場価値を測る一番のリトマス試験紙になります。
[リクナビNEXT
で「本物のオファー」を待つ]
まとめ：情報があれば、逃げ道は見つかる
「今の仕事を辞めたら、生活できなくなるかもしれない」 「店長経験しかない自分を雇ってくれるところなんてない」
そう思い込んで、限界まで我慢してしまうのが店長の悪い癖です。 でも、実際に行動してみると、私たちを必要としてくれる場所は意外とあります。
私は現在、異業種の営業事務として働いています。 年収は店長時代とさほど変わりませんが、夜は家で寝て、土日は休めるようになりました。 それだけのことで、人生はこんなにも楽になります。
重要なのは、一人で悩まないことです。 一人で求人サイトを見ていると、焦りから判断を誤ります。 だからこそ、プロのデータや視点を借りて、冷静に判断してください。
- リクルートエージェント
で、離職率などの「事実」を確認する
- doda
で、自信のない書類を「魔除け」に変えてもらう
- リクナビNEXT
で、手間をかけた「本気のオファー」だけを待つ
この3つへの登録はすべて無料です。 まずは登録だけして、通勤電車の中で求人を眺めるだけでもいい。 「ここ以外にも行く場所はあるんだ」と知るだけで、心はずっと軽くなります。
今回紹介した3つのサービス
| サービス名 | こんな人におすすめ | ブラック回避の使い道 |
|---|---|---|
| 1. リクルートエージェント
| 企業の「嘘」を数字で見抜きたい人 | 担当者に「過去の離職率・定着率」を聞き出し、地雷企業をデータで除外する。 |
| 2. doda
| 書類が書けず、自信がない人 | 「使い潰される人材」に見られないよう、職務経歴書を添削してもらい自衛する。 |
| 3. リクナビNEXT
| 自分の市場価値を知りたい人 | 登録して放置。「あなたが必要だ」という個別メッセージ（本気オファー）だけ待つ。 |
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