はじめに:月100時間残業の末、思考停止したあなたへ
「もう、この仕事を辞めたい…」 かつてカラオケ店の店長だった私は、月100時間を超える残業の中、毎日そう思って働いていました。でも、行動には移せませんでした。
なぜなら、怖かったからです。 9年間、飲食業界でしか働いたことがない。特別なスキルもない。こんな自分が、未経験で外の世界で通用するわけがない――。
しかし、ある考え方に出会ったことで、私の転職活動は劇的に変わりました。それが、「軸ずらし転職」です。
これは、今の経験やスキルという「軸足」は残したまま、もう片方の足だけを新しい業界や職種にそっと置いてみる、という考え方。いきなり未経験の世界に飛び込むのではなく、「半分だけ、新しい世界に足を踏み入れる」イメージです。
この記事では、かつての私のように「辞めたいけど怖い」と感じているあなたが、その恐怖を希望に変えるための「軸ずらし転職」の具体的な方法を、3つのステップで丁寧にお伝えします。
「軸ずらし転職」を成功させる、たった3つのステップ
難しく考える必要はありません。私が今を抜け出すために実践したのはたった3つのステップです。
ステップ①:「残す軸足」を決める(自分のスキルの棚卸し)
まず、多くの人が「自分には何もない」という壁にぶつかります。私もそうでした。 でも、大丈夫。あなたの経験は、必ず「スキル」に変換できます。
例えば、私が「雑用」だと思っていた経験は、こう言い換えられます。
- クレーム対応 → お客様の怒りの本質を理解し、解決に導く**「交渉力」**
- アルバイトのシフト管理 → 限られた人数で店を回す**「リソース最適化能力」**
- 売上管理 → 数字を分析し、改善策を考える**「課題解決能力」**
ほら、立派なビジネススキルです。 まずは騙されたと思って、あなたが今までやってきた「雑用」を紙に書き出し、「これは、つまりどういう能力だろう?」と言い換える作業から始めてみてください。それが、あなたの「残す軸足」になります。
ステップ②:「踏み出す一歩」を探す(異業種リサーチ)
自分の「軸足」となる強みが見えてきたら、次はその強みを活かせる場所を探します。 例えば、「店長の経験」で得たスキルが活かせる場所は、こんなにたくさんあります。
- 人事(採用担当): 現場で働く人の気持ちが分かるため、良い人材を見抜ける。
- 運営サポート: 現場の課題を理解し、本社から的確な支援ができる。
- 営業職: 高いコミュニケーション能力や交渉力を直接活かせる。
大切なのは、「未経験の業界に飛び込む」と考えるのではなく、「自分の〇〇というスキルを、別の場所で試してみる」と考えることです。
ステップ③:2つの軸を繋げる(志望動機・面接対策)
新しい業界の面接で必ず聞かれる質問があります。 「なぜ、うちの業界に?」
ここで、ステップ①と②が繋がります。 「私は前職で培った〇〇という**(ステップ①:残す軸足)の強みを活かし、貴社の△△という(ステップ②:踏み出す一歩)**の領域で貢献したいと考え、志望いたしました」
このように、あなたの過去と未来を繋ぐ「物語」を語ることで、未経験というハンデを乗り越え、説得力のあるアピールができるのです。
失敗から学べ。「軸ずらし転職」の注意点
もちろん、良いことばかりではありません。私の知人には、焦って全く関係のない業界に飛び込み、「こんなはずじゃなかった」と半年で辞めてしまった人もいます。彼の失敗の原因は、ステップ①の「軸足」を決めずに、ただ憧れだけで動いてしまったことでした。だからこそ、自分の経験の棚卸しが何より重要なのです。
実際に「軸ずらし」で人生を変えた仲間たちの話
私の周りにも、「軸ずらし転職」で人生を好転させた同僚がいます。
飲食業 → IT業界へ転職した後輩のWくん
彼は飲食店の正社員でしたが、独学でプログラミングを学び、ゲームアプリを開発する会社に転職しました。畑違いに見えますが、彼は「飲食業で鍛えられた忍耐力は、バグと戦う上で最高の武器になりました」と笑っていました。彼は今、年収アップも実現し、2倍になったそうです。
飲食業 → 小売業へ転職した同僚のTさん
エリアマネージャーだったTさんは、大手スーパーの同じくエリアマネージャーに転職しました。彼は「飲食も小売りも、『どうすればお客様が喜ぶか』を考える点では同じ。季節ごとの販売戦略や人員配置の考え方は、そのまま活かせました」と言います。クレーム対応の電話で、夜中に起こされることもなくなったそうです。
まとめ:今からやってみませんか?
もう一度、3つのステップを振り返りましょう。
- ステップ①: 自分の経験を「スキル」に変換し、残す軸足を決める。
- ステップ②: そのスキルを活かせる新しい場所を探す。
- ステップ③: 自分の過去と未来を繋ぐ物語を語る。
今の仕事を全て捨てて、全くのゼロから新しいことを始めるのは、とても勇気がいります。 でも、「軸ずらし転職」なら、あなたのこれまでの経験を捨てる必要はありません。
もし今日、あなたが行動しなければ、明日も明後日も、同じ職場で働き続けることになります。 まずは、ステップ①の「スキルの棚卸し」だけでも、今日やってみませんか? それが、人間らしい働き方を取り戻す、確実な第一歩になります。


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